• だしと私 2020.03.03

vol.18 ヘア&メイクアップ アーティスト 松田未来さん

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雑誌やブランドのカタログなどでヘア&メイクアップ アーティスト(以下ヘアメイク)として活躍している松田未来さん。ナチュラルなのにどことなく色気を感じるような、甘やかな表情をつくり出す松田さんのヘアメイクは、女性たちの心をつかんでやみません。ご自身のファッションやライフスタイルも注目されている松田さんが、輝き続けるために大切にしていることの一つが自炊。

そこで、松田さんの食生活や好きなことについて、お話をうかがいました。

ハードワークを支えるのは

母から仕込まれた手料理

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松田さんのインスタグラムでは、メイクやコスメのことだけでなく、一緒に暮らしている愛猫マドレーヌ(通称マド)ちゃんのことや、仕事の様子など、日々の暮らしをのぞくことができます。そしてたまにおいしいものの話がちらり。

「気持ちをあげたり、軽くしたりするのには、おしゃれと同じくらいおいしいものも重要ですよね。お友達と外で食事をするのも、家で料理をするのも大好きです」

いくつものおかずが並ぶ食卓の様子からは、松田さんがきちんと料理をする人だということが伝わってきます。聞いてみると料理歴は長く、なんと中学生の頃からお弁当を自分で作っていたのだとか。

「きっかけは、母との喧嘩なんです(笑)。あるときにお弁当が汁漏れしていたことを、反抗期だったのか、偉そうに文句を言ったんですよね。そしたら母が、あんたのお弁当なんてもう作らない!って怒ってしまって。もちろんその後は仲直りしたのに、お弁当はずっと頑なに作ってくれなくなったんです」

やむなく、毎日のお弁当を自分で作るように。

「母に教えてもらいながら、中学、高校と自分でお弁当を作り続けました。そのおかげで料理ができるようになったんです。母も働いていたから朝はバタバタと忙しかったはずだし、2歳下の妹のお弁当は作っていたんだから、教えるほうが面倒だったかもしれないですよね」

きっかけは喧嘩でも、きっとお母さまは、自分で料理をすることで松田さんに伝えたいことがたくさんあったのでしょう。

「当時はオーガニックなんて概念が一般的ではなかったけれど、母は市販品を使わず、すべて手作りしてくれていました。冷凍食品とかインスタントも絶対に使わなかった。お弁当のコロッケなんかも、朝から一緒に作っていました。料理に関しては、すごく褒めてくれるのがうれしくて。中学生の私がイカを捌いたりして、上手!上手!なんておだてられて、やる気になっちゃいますよね(笑)」

"母の味は?"と聞いてみたところ、洋梨のタルトやラム酒のケーキといったお酒の効いたスイーツとのこと。スパイスを入れたミルクティーが定番だったなんて素敵です。

「母の好みが大人っぽかったんでしょうね。もしかしたら父は困っていたかもしれないけど、私はそういう味が大好きでした。今、忙しくても自炊しているのは、そんな母の影響だと思います。時間がないからと市販のおかずを買っていたこともあるんですが、そうすると体力がもたない。すぐにしんどくなってしまって、体は正直だなあと実感しました。家で料理するのは少し面倒だけど、結果、ベストコンディションでいられる」

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撮影が立て込んでロケ弁が続くときは、家に帰ったら野菜を意識して食べるようにしているそう。また、朝はごはんとおかずをもりもり食べて、夜は炭水化物をとらず、おかずをちょこちょことつまむのが松田さんのスタイルです。

「夜にしっかり食べてしまうと、体型のことも気になるし、身軽に動けなくなるのが嫌で。お酒も好きですが、あんまり呑まないようにしています。でも外で友人と食事をするというときは、お酒も呑むし、たくさん食べます。楽しむときは思い切って、家では体調を整えて。自分でメリハリをつけています」

外食先でおいしい塩を教えてもらったり、好きな料理家が昔、よく通っていたレストランで働いていたことを知って嬉しくなったり、食に関しても松田さんのアンテナは確か。やいづ善八のことは、とある展示会で知ったそう。

「最初は、オーガニックコスメを扱っている会社の展示会で見かけたんです。試飲させてもらったらおいしくて。その後、別のウェルネスライフをテーマにした展示会にも出展されていたので、お話をうかがったら、添加物はもちろん、調味料などの塩分も加えていないと聞いて感動しました。おだしをとった後に、パックの中身をマドにあげたりもしています(笑)」

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出かけるときは、ポーチに個包装タイプのやきつべのだしを入れて携帯しているのだとか。

「本当においしいので、すっかりハマっています。朝は醤油を一滴垂らしていただいたりもしますが、仕事場ではそのまま飲むことも多いですね。撮影スタジオには必ずお湯があるので、紙コップにだしパックを入れてお湯を注ぐだけなんです。白湯よりは風味が欲しいなというときに、あったかいだしをいただくとほっとします」

もちろん、普段の料理にも大活躍。

「水の代わりにだしを使う、というくらい何にでも使っています。塩分に気をつけていることもあって、だしをしっかりとれば味付けは薄くても満足できるので。ごはんを炊くときにだしパックを入れたり、トマトクリームスープを作るときもだしを効かせたり」

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近年は、ご自身がディレクションする洋服やコスメの販売もスタート。ますます多忙を極める松田さん。

「忙しくても、仕事がすごく楽しいんです。もともと私が美容の世界に入ったのは、女の子たちの手助けがしたいと思ったから。というのも、中学生のときに初めてパーマをかけたのですが、それが大きな自信に繋がったという経験があって」

誰もが少しの不安と自信のなさを抱えているもの。そこに美容のマジックがかかると、ふわっと花開くきっかけになるのかもしれません。

「自分の見た目を好きになれたら、何かを選ぶことにも、自分の考えを伝えることにも自信を持てるようになりました。自分のことを好きになれたら、周りの人のことももっと好きになれました。美容のパワーってすごい。私のように美容で救われる人がいるんじゃないかなと思ったんです」

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そんな想いを胸に、松田さんは専門学校を卒業して美容院に就職。経験を積んだ後、上京してヘアメイクとして独立しました。

「美容師の仕事はとても楽しかったのですが、どうしてもヘアメイクの仕事がしたかった。雑誌で、岡尾美代子さんというスタイリストの方のページを見るのが大好きだったんです。岡尾さんのお仕事はひと目でわかる。そのページを見ると、まるで好きな人に会ったあととか、いいことがあった日の帰り道みたいな気持ちになれるんです。そんな余韻のあるページが作りたくて」

ファッションの撮影現場には、アートディレクターやカメラマン、スタイリスト、プロップスタイリストなど、たくさんの人が関わっています。

「ヘアメイクの仕事はその中心ではないけれど、私はどういう目的で撮影するのか、カウンセリングかというくらい、しつこく聞き込みます。その撮影をリードする人の脳内を具現化するような気持ちで取り組んでいるんです。そこまでやるのは信頼関係を築くため。もし想像と違うことを私がした場合も、あそこまで目的を共有してくれていたら、きっとまかせて大丈夫、と思っていただけると思うから」

そんな松田さんが手掛けたヘアメイクには、"女の子"がときめくようなスイートな輝きがあります。

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「メイクって、自分で選択をする楽しみでもあるんです。例えば今日はオールブラックな服装に赤いリップをしたいから、ファンデーションを塗るとトゥーマッチ。だったら素肌にしよう。そんなふうに日々、チョイスするのが楽しみで。

料理も少し似ている気がします。洋風の料理にしたいからクリームを使おうとか、目的に合わせて素材を選びますよね。だしはメイクで例えて言うならば、スキンケア。ほかの部分とのバランスをとるためのベースだと思います」

5月には、松田さんが手掛けるコスメの第一弾であるマニキュアが発売予定。活躍から目が離せません。

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取材・文/藤井志織

プロフィール

プロフィール.jpg松田未来

関西のヘアサロンに勤務後、2016年より東京でヘア&メイクアップアーティストとしてのキャリアをスタート。カタログや雑誌、広告などで活躍するいっぽう、洋服やジュエリー、コスメのディレクションも手掛けている。インスタグラム @mira0911 も大人気。