• だしと私 2022.04.14

vol.43 恵比寿〈アムール〉エグゼクティブシェフ 後藤祐輔さん

フレンチレストランのシェフが提案する鰹だしレシピ

『ミシュランガイド東京 2013』にて一つ星を獲得し、以後7年連続で一つ星を獲得。現在は恵比寿のフレンチレストラン〈アムール〉のオーナーシェフとして活躍している後藤祐輔さん。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、多くの人の価値観や生き方が変化した今、「家庭での料理をより豊かに」という想いから、料理家としても活動を始めました。

そんな後藤さんが、やいづ善八のアイテムを使ったなら、いったいどんなメニューができるのでしょう。今回は、後藤シェフに教えていただいたレシピをご紹介するスペシャルな会をお届けします。

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日本の食材を使ったフレンチのメニューを作り続けている後藤さん。

「フレンチだからフレンチの考え方じゃなきゃっていうのは好きじゃないんですよね。自分で壁を作ってその中で縮こまっていても、それしかできないだけ。日頃からおいしいものを食べて研究して、おいしいと思えば取り入れて。いいものは全部認めたほうがいいじゃないですか。

だから料理長になったときから、鰹や昆布のだしを使ってきたし、中華の材料も技法も使ってきました。おいしいものが作れるならば、なんでもいいと思っているんです」

その結果、ジャパニーズフレンチとして人気を博すように。

「狙ったわけではなく、日本でフレンチを作ったらこうなったという感じです。だって、日本の食材ってすごくおいしい。フランスから野菜を輸入すると、もう鮮度が落ちてしまうんですよね。今は昔よりも流通が発達したけれど、それでもフランスよりも北海道から届くほうが新鮮。必然的に日本の食材を使うようになりました」

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営むレストラン〈アムール〉も11年目。

「それなりに知名度も上がりましたが、フレンチのシェフっていうとどこか堅いイメージがありますよね。もう少しやわらかい部分も見せて、幅広く料理の提案をしたいなと思うようになりました。

家で料理をする機会が増えた方も多いのか、そんな仕事の依頼も増えていて」

とはいえ、料理家としての料理は、レストランで作る料理とはまったく違うのだとか。

「こだわりを出すとシェフになってしまいますから。家庭用に提案するのだから、食材は普通のスーパーで買って、みんなが持っている調理器具を使う、ということを絶対条件にしています」

もちろん、料理のプロとして「もっとおいしくできるのに...」と思うことがないわけではありません。

「そこはプロとして、ほかの料理研究家の方々とは別の視点からのポイントをお伝えするようにしています。例えば、肉を使うときは肉の分量の1%の塩を振って10分くらいおくことによって、余計な水分とともに臭みが抜けて、焼き目もきれいにつく、とかね。この下拵えをしておくだけで、唐揚げも煮物もぐっとおいしくなるんですよ」

料理家としての仕事は、料理雑誌やテレビ番組から出たテーマに合わせて、レシピを考えること。

「お題があるなかで考えるのは面白いですね。そのなかで、身近に手に入る食材を使って、基本的には10〜15分でできるものを考えます。そのためには、無添加とか丁寧なだしにもこだわりません。面倒だ、難しい、と言って作らないよりも、まずは作ってもらいたいから」

そこにあるのは後藤さんのシンプルな想い。

「料理って難しくない。誰でも作れるものだから、ぜひ楽しんでほしい、と思っているんです。最近、学生時代の同級生からも『どうやってチキンブイヨンってとるの?』って質問がきたりするんです(笑)。料理に興味を持つ人が増えていることを実感しています」

だから、やいづ善八のやきつべのだしや深み鰹白だしも、簡単においしい料理ができるという点が気に入っているそう。

「特にだしパックは、ひきたてのだしの香りがあって好きですね。自分で欲しい濃さを調整できるのもいい。汁ものやだし巻き卵、おひたし、酢のものなど、いろいろ作りました。深み鰹白だしで作る煮卵にもハマっています。ゆで卵に3〜4ヶ所、楊枝で穴を開けて、深み鰹白だしを薄めずにそのままかけて、1日くらい漬けるだけ」

今回は、特別に春にうれしい軽やかなポトフを教えてくださいました。

ぜひお試しを!

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チキンと春野菜の和風ポトフ

材料(2人分)
だしプレッソ 鰹節 100ml
鶏もも肉 150g
アスパラガス 4本
たけのこ 1/2本
新玉ねぎ 1/2個
トマト 小1/2個
オリーブ油 大さじ1/2
塩・こしょう 各適量
菊の花 適宜

作り方

1 鶏もも肉はひと口大に切り、塩を振る。野菜はひと口大に切る。

2 鍋にオリーブ油を入れて火にかけ、鶏もも肉を皮目から入れ、こんがりと焼き色がつくまで焼く。

3 野菜を加え、かるく焼き色がつくまで焼き、だしプレッソと水150mlを加え、5分ほど煮る。

4 塩、こしょうで味を調える。あれば菊の花を散らす。

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取材・文/藤井志織

chef 1.jpgプロフィール

恵比寿〈アムール〉のエグゼクティブシェフ。

フランス料理の料理人である父親の影響で料理人に。辻グループ・フランス料理専門カレッジ、辻グループ・フランスリヨン校を卒業後、フランスや日本のレストランで経験を積み、2012年、〈アムール〉開店時より総料理長に就任。オープンわずか半年で『ミシュランガイド東京 2013』にて一つ星を獲得。以後5年連続で一つ星を獲得。2016年11月 シャンパーニュ騎士団より「シュバリエ・ドヌール」の称号を叙任。フランス料理の技術、精神をベースに『日本人の感性、感覚を大切にし、日本人でしか表現できないフランス料理』をテーマに、独自の世界観、理論に基づき、日々研鑽している。