• だしと私 2019.12.03

vol.15 日本舞踊家 有馬和歌子さん

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撮影 岡本隆史

700年の歴史をもつ日本舞踊。「舞楽」や「能楽」のような伝承された古典技法を基礎とし、舞台で表現される芸術舞踊です。さまざまな民俗芸能のエッセンスが、洗練された形で含まれており、古代から現代に至る日本の芸能の集大成とも言えるもの。そんな日本舞踊とだしの共通点といえば、どちらも伝統的な日本文化と言えます。

たおやかに見えて、実はとても体力を使う日本舞踊。からだづくりのための食事も大切にしているという有馬和歌子さんに、お話をうかがいました。

日本舞踊家として活躍する

21歳の大学生

日本舞踊を家業とする家に生まれ、2歳のときに父、坂東寛二郎のもとへ入門。今は、国立劇場をはじめとする舞台公演のほか、さまざまなイベントやテレビ、Webメディアなどに登場し、注目を集めている和歌子さん。

「両親から同じ道にすすむようにと言われたことはないんです。ただ、幼い頃から踊りに親しんできましたし、父の舞台や、それを支えている母を見てきて、本当に自然な流れで今に至ります。きれいな衣裳や舞台での感動を重ねるうちに、この仕事をしたいとずっと思ってまいりました」

日本舞踊家として活躍する一方で、現在は大学生として美術史を学んでいるのだそう。

「子どもの頃から、母に美術館や音楽会に連れて行ってもらい、芸術鑑賞が好きでした。最初は、せっかく絵を観るのなら背景などをもっと知ってみたい、という気持ちで学部を選んだのですが、授業ひとつひとつに発見が多く、今、大学で学んでいることは、舞踊家を目指す上で大切な芸術的要素です」

プロの日本舞踊家を目指す和歌子さんだから、大学での勉強への感度が高くなっているのかもしれません。

「教授の方々は研究すること、好きなことを学ぶということを極めていらして、その存在から学ぶことがたくさんあります。今は週に3日間通学し、卒論の準備をしながら勉強をしています。経営学科の授業など、他学科の分野にも興味を持っております。そして、学生でありながらもありがたいことに、舞台にお声がけいただく際には、具体的な内容の企画や演出などもさせていただいております」

そんな忙しい生活のなかで、和歌子さんが力を入れているのが子供舞踊塾。自身が代表をつとめ、「日本の美と技術を」をコンセプトに、舞踊のみならず、より広い視野を持って、子どもたちの感性を伸ばすことを目的にしています。

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子供舞踊塾 企画公演2019年の様子
3歳~12歳の子供たちが、一人ずつごあいさつをしました。(口上)

「子供舞踊塾は、私が小学2年生のときに父が立ち上げたものです。昨年から私が代表となり、教育コンテンツとして年に一度大きな舞台に立つという目標に向かい、お稽古やさまざまな日本文化体験を企画しております。日本舞踊を広めたいという気持ちとともに、子どもたちが本質的に成長できる機会を提供したいと考えております」

短期間で本格的な日本文化を体験できるという画期的なシステムから、参加者は年々増え続けています。プログラムを修了する1年の終わりには、プロフェッショナルな人たちに支えられ、舞台に出るのだとか。

「3歳から12歳までの幅広い年齢の子どもたち20人ほどが、1つのチームになるというところもポイントです。最初は緊張ぎみだったお子様も、そのうちに自分からやりたいと言ってくれます。学校や年齢を越えて楽しめることも、魅力のひとつかと思います。いつしか、お兄さん、お姉さんが、自分よりも小さなお友達を助けている場面がよくみられます。1年間のプログラムのうちに結束が強くなり、お稽古場から帰るときに、まだ帰りたくないと言ってくれるお子様もいらっしゃいます」

この経験がそれぞれのお子様の心に根付き、大人になったときになにかしら役にたつのではないかと、和歌子さんは考えています。

「日常の所作や努力することや人への気遣いなど、勉強の成績とはまた別の角度から褒めてもらう、幼くして自分の輝いているところを認めてもらうということは、とても大切なのではないでしょうか。子供舞踊塾では、一人ひとりに向き合い、魅力を引き出すことを目指しております」

日本舞踊家の体力を支える

食生活とは?

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和歌子さんは現在、21歳。師匠であるお父さまの坂東寛二郎さんとお母さまとの3人暮らし。毎日、なるべく3人で食卓を囲むようにしているそう。

「普段は、母が作ってくれた料理を3人で食べています。お稽古の後で、さっと作れておいしいものが多いですね。全員お肉が大好きなので、肉料理も多いです。野菜不足にならないよう、気をつけています。舞台やイベントは本当に体力勝負ですから、しっかりと食べてスタミナをつけないと...」

3人それぞれが多忙なため、夕食の時間はミーティングの場ともなっているとか。

「日常的にごはんを囲んで仕事の話をしたり、目標について話し合ったりすることは多いですね。イベントがあるときは、踊るだけではなく、企画の立ち上げ段階から参加させていただくことが多いため、このイベントをもっとよくするためにはどうしたらいいか、ということを、夜中まで打ち合わせしたり。それぞれ少しずつ意見が違うこともあるので、それをすり合わせるための大事な時間になっています」

有馬家の食卓は、大皿に盛ったおかずをシェアするスタイル。

「食べるという行為って、もちろん栄養をとるのが本来の目的ですが、それだけじゃないことのほうが大きいなと思うんです。我が家なら、家族3人で食卓を囲むのは、おいしさだけでなく情報や気持ちを共有するためでもある。おいしいものを食べると、また食べたいなという気持ちも、大切な人にも食べてもらいたいなという気持ちも生まれてくる。同じものを食べることに、特別な意味があると感じているんです」

もともと食べることが好きな和歌子さん。食に関する特別感や、コミュニケーションツールとしての食の役割も、大事に考えているようです。

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「母は、"小さな子どもは味なんてわからないからなんでもいいのよ"という考えに異論があって、高級なものをということではなく、おだしをちゃんとひいて、ごはんやおかゆをちゃんと炊いてという手間がかかっていることが大切だと考えているようです。それは、踊りで大成したいなら、踊りだけじゃなく、生活の周りにあるものをきちんとしなくてはならないという考えにつながっています」

お母さまから聞いたおばあさまの「食べてもらいたいと思う気持ちは、相手への愛情のバロメーター」という言葉が、心にとても響いているという和歌子さん。

「自分が料理をする側になると、確かにそうだなと思うんです。仕事や勉強を頑張っているときこそ、時間をつくってあたたかいものを食べることで、気持ちが安定しますよね。だから両親が仕事で遅く帰ってくるときは、大皿にいっぱい料理を作って待っているんです」

和歌子さんが小さな頃は、「なにも加えないものを食べさせることで舌が育つ」という考えから、離乳食にはだしをひき、大さじ1杯のおかゆを手作りしてくれていたお母さま。手間を惜しまず、だしはいつも鰹と昆布でとっているのだそう。

「簡易なだしパックをいただく機会もあったのですが、使い切れずに残ってしまっていました。ところが、やきつべのだしは、香りが素晴らしいし、濁ることもなくきれいな黄金色に仕上がるからと、母も愛用しているんです。冷めてもおいしいままなので、多めに煮出して冷蔵庫で保存しておき、出し巻きに使ったりもしています」

だし巻き卵は、和歌子さんにとって最近の課題の1つなのだとか。

「だし巻きってすごく難しいですよね。母のだし巻きは少し甘めで、おいしいんです。母にアドバイスをもらうことはありますが、失敗しても経験と思って、主体的にやるようにしています。母は、自分の大切な人にこれを食べさせたいという気持ちができてからが、お料理は上手になると言います。お料理って、愛情が必ずこもっていると思う。食べてもらう相手に対しても、素材に対しても」

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大切な人に食べさせたいという気持ちや、日本の文化であるだしの良さを伝えたいと、子供舞踊塾でも、だしのワークショップを開催しています。

「おやつタイムとか食育ワークショップなどで、同じ目標をもつチームで食卓を囲むことを体験してもらいたいんです。だしのワークショップを開催したときは、だしを煮出すときの色や香りの変化にみんな反応していましたね。家に帰って、だしがおいしいとか、枯節や荒節なんて話をしているそうです。」

日本の文化の伝承を、愛情を込めて実現している和歌子さん。最近は、やきつべのだしをプレゼントすることも増えたと言います。

「大学の友人で留学する人が多く、体調がすぐれないときに、日本のあたたかいものを食べたらすぐ治った、という話もよく聞きます。だから、やきつべのだしを贈ってあげると、みんなすごく喜んでくれるんです。今まで自炊したことがない人も簡単に使えますし、日本の料理が恋しくなったときに、きっと支えになりますよね」

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子供舞踊塾 特別ワークショップ だしを学ぼう!よりオリジナルの味噌汁作りに挑戦いたしました。

プロフィール

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撮影 岡本隆史

有馬和歌子/舞踊家・子供舞踊塾代表

平成10年、東京都生まれ。2歳のときに、父、坂東寛二郎へ入門。平成24年、坂東流名取を取得し、坂東寛十胤となる。平成28年、坂東流師範取得。現在は、舞台やイベント、テレビなどで活躍中。子供舞踊塾へのお問い合わせは、Facebook 子供舞踊塾メッセンジャーにて随時、受付中。

‪kanjiro.wakako.202@coda.ocn.ne.jp

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