YAIZU ZEMPACHI LETTER
日本のだしで作る韓国料理のおいしさ
国によってベースとなるだしはさまざま。日本料理のベースとなっているのは鰹や昆布、いりこのだしですが、お隣の国、韓国ではいりこや牛肉でだしを取ったりします。そして、日本で生まれ育った韓国人は、鰹だしを韓国料理に使ったりもしているようです。
今回は、在日韓国人として日本で育ち、現在はクラフトマッコリを販売している成(ソン)恭子さんに、マッコリと相性のいいだし料理を教えていただきました。

神奈川県逗子で、海と旅をテーマにエシカルで上質なライフスタイルを提案する「ジンジャービーチイン」というセレクトショップを営んでいる成さん。現在は駅前に移転し、二階建ての古民家でカフェPARAISO COFFEEを併設。旧店舗もいずれ、別の形で運営していく予定だとか。


「自然の近くで子育てをしたくて、2008年に東京から葉山に移住しました。3人目の子どもを出産した33歳の頃に、空き物件と出会って、ここでお店がやりたい!って思ったんです。それまでそんな経験があったわけでもないけど、ここで自分の好きな空間を表現したくなった。1人目がまだ5歳だったから、周りには『子育てが終わってからにしたら?』とも言われたけれど、子育てがいつ終わるかなんてわからないって思ってました(笑)」
店に並ぶのは、海と旅の気分を感じられるアイテム。表参道ヒルズや伊勢丹新宿店にも、2020年頃まで出店していました。そんな忙しい日々を過ごすなかで、ずっと探求し続けていたのが、自身のルーツ探し。
「10歳になるまで、自分が在日韓国人であることを知らずに育ったこともあり、知った瞬間から自分探しが始まったんです。それで2019年に本籍地を見たくて、韓国へ行きました」
そこで出会ったのがナチュラルなマッコリ。オーガニック食品やナチュラルワインを愛する暮らしのなかでずっと探していた、酵母と乳酸菌が生きた状態で含まれている本物のマッコリでした。
「日本でもよく生マッコリと書かれているのを見るかと思いますが、加熱殺菌しているので実は"生"じゃないんですよね。本来は発酵によってシュワシュワと微かに発泡するのですが、日本では後から炭酸を足しているものがほとんど。だけど、ナチュラルワインとかクラフトビールとか、お酒の世界でも自然派が広がっているなかでの需要は絶対にあると思っていました」


〈ジンジャービーチイン〉では、「海辺へワインを持って行く」という楽しさを伝えるために、酒販を取得してナチュラルワインを販売していました。ついでにお酒を輸入できる資格も取っていたので、韓国で飲めるようなおいしいナチュラルなマッコリを日本で販売したい!と意気込んだのですが......。
「発酵が続いているものは爆発しちゃう可能性もある。やっぱり加熱して発酵を止めたり、添加物で味を安定させたりするしかないんですよね。温度管理も難しいし、賞味期限も短いから、輸入自体がとても難しいとわかりました」
輸入を断念した成さんは、ならば日本で造るしかないと醸造所を探し、こだわりの材料を使って、自身がおいしいと思うマッコリのブランドをスタートしたのです。それが現在の〈ホワイトマンデー〉。

「韓国料理だけでなく、フレンチやイタリアン、日本の家庭料理にも合わせて、日常的に楽しめるマッコリです。2020年から販売しているオリジナルは、シュワシュワと発泡しているタイプ。とても軽やかで飲みやすく、酵母が生きているため、美容や健康のために取り入れている人もいます。今は新しい醸造パートナーとゆっくりと楽しめる発泡していないタイプや、ワインのような味わいのものなど、種類を少しずつ増やしているところ」
一度見たら忘られない可愛いエチケットも特徴的で、プレゼント需要も多いとか。そこには、「ナチュラルワインのように、日々の食事に合わせて気軽に楽しめるようなお酒であってほしい」という想いが込められています。
「手造りなのでロットごとに味わいが微妙に異なることも多く、最初の頃はクレームもありました。醸造からボトリングまで、そのすべてが職人の手仕事なのです。ホワイトマンデーで大事にしてるのは、生きている本物のマッコリであること。余計なものは加えないこと」
だんだんとファンが増えた今では、"ナチュラルマッコリ"や"クラフトマッコリ"としての認知も広がってきています。最近は、映画監督、ホン・サンスの30周年イベント「月刊ホン・サンス」とのリミテッドエディションも発売して好評を博しているよう。

「日本ではマッコリというと、焼肉屋さんや韓国料理家さんで飲むものだと思われがち。でも乳酸発酵なので体に優しく、味わいも軽やかだから、実はどんな料理にも合わせやすいんです。鰹や昆布のだしとも相性がいいんですよ」
そこで、成さん一押しの定番料理を教えていただきました。
「韓国は汁ものが大好き。汁ものをつまみにお酒を飲むことも、韓国の食文化の一つと言えます。私は幼い頃は自分が韓国人だと知らなかったこともあって日本の食文化にも馴染んでいましたが、改めて考えてみると母の料理には汁ものが多かったかもしれません」
数年前に再婚した夫はアメリカ育ちの日本人。4歳になる娘は、日本、韓国、アメリカの文化を吸収しながら育っています。
「娘もスープが大好きなので、私も家でよくスープを作ります。特にこの白菜の味噌スープは、幼い頃から母がよく作ってくれた思い出の味。白菜を下茹でしてから入れると、白菜がすごくおいしくなるんですよ。娘の分を取り分けたあと、青唐辛子を加えています。あの、すっとした風味が大好きで」

作り方はとっても簡単。地元産のおいしい白菜を柔らかくなるまでゆでて、冷水にとり、ぎゅっと水気を絞ります。鍋に水とやきつべのだしをいれて煮出し、白菜を入れ、味噌を溶き入れるだけ。韓国のテンジャン味噌だと煮込むほどにおいしいけれど、日本の味噌でもおいしくできます。
「ホワイトマンデーにジンジャービーチインの経営、子育てと毎日が大忙し。だから手軽においしいだしが取れる[やいづ善八]の商品があって助かってます。だしパックや白だしも余計なものが入っていないから、おいしいし、安心して使えるのは嬉しいです」
マッコリにもよく合う白菜味噌だしスープ。ぜひお試しください。
取材・文/藤井志織
プロフィール
成 恭子
架空のホテルをイメージした、逗子のライフスタイルショップ「Ginger Beach Inn」(神奈川県逗子市逗子1丁目6−6)のオーナー。2020年にクラフト生マッコリブランド「White Monday」(https://whitemoonday.com)を立ち上げ、オンラインショップや全国の取扱店で販売。映画や料理などとのコラボレーションも企画している。