• だしと私 2026.10.27

vol.60 料理家 真藤舞衣子さん

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だしを活用すると大人の味覚も育つ

おしゃれな世界観と、手軽においしくできるレシピが人気の料理家、真藤舞衣子さん。祖母も母も料理上手で、来客の多い家で育ったことから、子どもの頃からの料理好き。幼い頃に、いただきものの大きな鮭を、祖母に教わりながら捌いていた記憶もあるそうです。

「料理をきちんと教わったわけではないのですが、食べるのが好きだからどんどん覚えていって。中学生の頃から自分でお弁当を作っていたし、高校生の頃にはラムラックとか焼いてました(笑)」

とはいえ、最初の仕事は料理とは無関係のIT会社。コンビニのお弁当や冷凍食品とはほぼ無縁の生活だったのですが、ある日、知人の子どもが冷凍してあるお弁当を日常的に温めて食べている様子を見たことをきっかけに、「子どもにはなるべく手作りの温かいごはんを食べさせたい。そのために大人の食育をしたい」という想いを抱くように。会社を辞めて向かったのは、なんと京都のお寺でした。

「料理を仕事にするべく、フランスへ留学しようと思っていたんですが、その前に日本の文化もきちんと知っておきたかった。そうしたら知人からご縁をいただき、京都の大徳寺という禅寺に住み込みで暮らすことになりました」

お寺で1年を過ごしながら畑仕事や、お茶などの日本の文化も学んだ後、フランスへ留学。リッツ・エスコフィエでお菓子のディプロマを取得して帰国し、都内の菓子店で製菓の仕事に就きました。その後、生まれ故郷である東京・赤坂や山梨で、自身のカフェ&サロン「my-an」をオープン。料理教室を主宰しながら、料理を提供していました。

そんな経歴を持つだけに、現在は料理からお菓子、ルヴァンのパンまで、あらゆるテーマで活躍中。食文化や食育活動のイベント、料理教室なども主催し、近年は発酵料理の取材でも引っ張りだこ。

「祖母が健康オタクだったから、発酵の知恵は体に染み込んでるんですよ(笑)。だからと言ってなんでも麹と合わせて調味料にすればいいとは思っていなくて。塩麹があれば、あとは野菜と合わせればいいし。麹がなくても、生姜が余ったらすりおろして瓶に詰め、上からラップしておけば発酵して長持ちします。そんな食材の活かし方や食卓での作法など、私が学んできたことを次の世代へ伝えていけたらいいなと思っています」

真藤さんの軸にあるのは、ずっと家庭の食文化を底上げすること。大人の味覚を育てれば、自ずと子どもたちも健康に育っていくから。「人が健康になるために、おいしく食べられることが大事。そんな食にまつわる活動を続けて行きたい。そのためなら頑張れる」と語る真藤さん。

「食品メーカーなど企業のコンサルタントもしているのですが、商品開発の前に味覚をリセットするレッスンもしています。濃い味付けや加工食品に慣れていると、舌が味覚を感じにくくなってしまいがち。食材の本来の味を感じるためにも、家庭で手作りの料理が大切だと考えています。そのうえで見た目がいい方が、おいしそうだし楽しいなと」

だから真藤さんが提案し続けているのは、家庭でできる手軽な料理。そして少し気分が上がる素敵な世界観。

「忙しい現代だから、毎日、完璧に手作りするのは難しい。だしも本格的にとるとおいしいことはわかっているけれど、簡易だしだって選べばおいしいものがあります。私は普段、昆布や煮干しでとっていますが、麺つゆを使うレシピを依頼されたら、なるべくナチュラルなものを買ってきて使ったりしますよ」

真藤さんがだしを使うのは、主にうま味が必要なとき。また、昆布のとろみを加えたいときや、体のために栄養価が欲しいときも使うそう。

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「葉ものの野菜など、だしが出ない野菜やうま味が足りないときに、だしプレッソがあると便利ですね。そのまま水分代わりに使うと、いろいろな料理が手軽にできます。先日は混ぜ込みご飯の素の五目ちらし寿司を作って、おもたせにしました。昆布のだしプレッソと酒、ほんの少しの片栗粉を入れて錦糸卵を作り、上にのせたら、見た目も豪華でさらにおいしくなりましたよ」

今回の取材に当たって、真藤さんが作ってくれたのは昆布のだしプレッソを使った鮎のビリヤニ。ビリヤニとは、インドやパキスタンなど南アジアの炊き込みご飯。スパイスや肉で作ったグレービー(カレー)と半ゆでにした長粒米を重ね、蒸しあげて作ります。今回は、固く炊いたお米にだしの旨みを吸わせて作るのがポイント。

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「2人前なら2/3合くらいのバスマティライスを、多めの水で硬めにゆでます。ゆでている間に鮎2〜3尾を塩焼きにしておきますが、秋なら秋刀魚でも美味しいですよ。バスマティライスに火が通ったら余分な湯を捨てます。土鍋に発酵バター大さじ2と塩漬けの実山椒を入れて炒め、ゆでたバスマティライスを入れ、ガラムマサラ(またはカレー粉)小さじ2を加えて混ぜます。そこにだしプレッソ 昆布大さじ2を加え、塩焼きした鮎をのせて鮎をのせて蓋をし、10分くらい弱火で炊きます」

炊き上がったら刻んだミョウガや大葉をたっぷりのせ、食卓へ。

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「食卓で蓋を開け、鮎をほぐして混ぜると盛り上がりますよ。酸味が合うので、自家製梅干しを添えました」

副菜は香る鰹だし醤油を生かした、夏野菜のだし浸し。

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「これも簡単で、大玉のトマト1個を刻んで容器に入れ、香る鰹だし醤油大さじ3と鷹の爪を加えて混ぜたものに、焼いたとうもろこしと、素揚げにした長なすやピーマン、インゲンを加えていくだけ。水分はトマトの果汁とだし醤油だけ。程よく酸味があって、サラダのようにさっぱりと食べられるので、まだ暑さが残る時期にぴったりです。味が馴染んでいくので、多めに作っておくのがおすすめ」

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取材・文/藤井志織

プロフィール

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真藤舞衣子

料理家。環境や健康にいい暮らし方を、料理を通して提案している。IT関連会社、京都の禅寺での生活を経て、フランスへ料理留学。都内の菓子店に勤務した後、赤坂にてカフェ&サロン「my-an」をオープン(休業中)。現在はレシピ本執筆やメディア出演、食育や発酵食の魅力を伝える料理教室の主催、店舗プロデュースや企業のレシピ開発など、幅広く活躍している。