• おだしの読み物 2018.04.03

だしの豆知識 第1回 和食とだし(前編)

これから4回シリーズで、だしの豆知識についてお届けします。

今回は、「和食とだし」についてです。

和食はユネスコ無形文化遺産

2013年12月、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。では、和食とは具体的にはどんな料理のことを指すのでしょうか。寿司?天ぷら?すき焼きでしょうか?

農林水産省が発表している和食の定義によると、和食とは特定の料理分野を指すのではなく「日本人の伝統的な食文化のこと」を指します。それを和食と定義してユネスコの無形文化遺産に登録されたのです。

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和食=自然を尊ぶ日本の食文化

南北に長く四季が明確な日本には多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまた、これに寄り添うように育まれてきました。そして、このような「自然を尊ぶ」日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」が、「和食」としてユネスコ無形文化遺産に登録されたのです。

うま味を上手に活用する和食

また、一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは、理想的な栄養バランスを実現する食事スタイルと言われています。そして和食では「うま味」を上手に使うことによって脂肪の少ない食生活を実現し、日本人の長寿や肥満防止に役立っています。この「うま味」を担っているのが「だし」です。

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うま味を多く含む食材と成分

かつお節、昆布、煮干しなどのだし素材はうま味を多く含みます。代表的なうま味成分としては、昆布に多く含まれるグルタミン酸、かつお節や煮干しに多く含まれるイノシン酸、そして椎茸に多く含まれるグアニル酸などがあります。

うま味の相乗効果とは?

そして、これらのうま味成分には味の相乗効果があります。普通は、うま味成分を1+1で合わせても2倍になるだけですが、グルタミン酸とイノシン酸といった特定の組み合わせの場合、1:1が2倍ではなく7~8倍になることが知られています。当然、昆布とかつお節、あるいは、煮干しと昆布などを組み合わせた場合にも、うま味の相乗効果は発揮されます。日本人は、うま味成分が豊富に含まれる、昆布やかつお節、煮干しなどを上手に組み合わせ、生活に取り入れて、美味しくて健康的な食生活を作り上げてきたのですね。

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かつお節と昆布の組み合わせの歴史

ところで、かつお節と昆布の組み合わせは、いつ頃から食べられていたと思いますか。実は、江戸時代初期の文献(料理塩梅集1668年)には、かつお節と昆布を組み合わせた料理法が登場しています。この組み合わせが一般化したのは、江戸時代中期以降と考えられています。

一般化した理由の一つには、江戸時代中期から幕末にかけて成立した「昆布ロード」と呼ばれる北前船による昆布の流通網の発展があります。これにより、大量の昆布が北海道から大阪に運ばれ、昆布の消費の一般化が促進されたのです。当時は化学調味料もない時代ですので、かつお節と昆布の合わせだしを飲んだ人たちは、うま味の相乗効果が発揮された美味しさにビックリしたことでしょうね。