• だしと私 2022.12.26

vol.48 「Beppu Sake Stand 巡」店長 梁原 仙喜(やなはら そに)さん

だしと醸造酒と韓国料理


大分県別府で人気の酒屋&角打ちスタンド「Beppu Sake Stand 巡」で働く梁原さん。日本酒、ナチュラルワイン、クラフトビールと、それらに合う料理を提供しています。特においしいと評判を呼んでいるのが、在日4世でもある梁原さんが作る韓国料理。そこで梁原さんと一緒に、だしを使った韓国料理の可能性について探ってみました。

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韓国料理というとマッコリや焼酎を合わせるのが一般的ですが、キムチを始めとした韓国料理を合わせるのは梁原さん独特のスタイル。

「たしかに、いわゆる韓国料理ってニンニクの香りが強かったり、辛すぎたりして、ワインと合わせようなんて思わないですよね。でも私が作るキムチは、ニンニクがそこまで強くなく、果物が入っているのでワインや日本酒にもよく合うんですよ」

果物そのもののキムチこそ、梁原さんが生み出した人気料理。

「外食先で、イチジク&生ハムのような果物と組み合わせた料理をよくいただくんですが、果物に火を入れてもおいしいとか、塩とも相性がいいってことを知って、それをヒントにしました。もともとキムチにはすりおろしたりんごや梨を入れるものなので、合わないわけはないんです。ほかにも、チーズを入れたり、胡麻油のかわりにオリーブオイルを使ってみたり、新しいキムチにトライしています」

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素材の味を大切にしたやさしい韓国料理が好きなのは、平壌に縁があるからかも、とのこと。

「叔父が住んでいて何度か訪れたことがあるんですが、食生活がとても豊かな国なんです。素材を大切にしていて、みんな勤勉で、昔の日本みたいな感じ。その影響もあって、私が作る料理はニンニクや辛味を抑えて、素材本来のだしや旨味を引き出すようにしています」

梁原さんが最初に仕事として韓国料理を作ったのは自身が営む「民家カフェ uri chip」というカフェでした。

「当時はまだ子どもが3〜4歳と小さくて、保育園と実家に助けてもらいながらバタバタと頑張っていました。やいづ善八のやきつべのだしを初めて使ったのは、その頃。忙しくてだしをきちんとひくこともできないときに、すごく助かったんです。それで、お店でも使うようになりました」

その後、カフェをたたんで「Beppu Sake Stand 巡」をスタート。

「もともとお酒が好きでバーをやりたかったんですが、お酒の仕事を女性がやるってことに両親から反対されてしまって。カフェ時代からお酒を出したりもしていましたが、現在のオーナーである丸田氏と出会って。彼は地酒専門店の跡取りで、それぞれの思う飲食業やお酒に対する志が一致し、共に"巡"をスタートしました。」

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「Beppu Sake Stand 巡」には常に自家製キムチが10種類くらい並んでいるそう。

「大分は海産物も山のものもお肉もおいしいんです。農家さんとの繋がりも大切にしながら、その日、手に入った旬の素材を使って料理をしています。ひそかに発酵もテーマにしています」

定番的な料理といえば、大豆もやしのスープだとか。

「豆もやしのキムチやナムルをよく作るんですが、韓国ではその豆もやしの茹で汁を捨てずにスープにする習慣があるんです。ヘジャングッっていって、肝臓を労わるので酔い覚ましや二日酔いに効くと言われています。すごく旨味があるスープで、その調味を醤油ではなく、だしプレッソを使って作るとおいしいんですよ」

わかめや溶き卵を入れてもおいしく、お店でも大評判だといいます。

「ほかに、だしプレッソでピビン麺を作ったりも。本来は汁なしなんだけど、タレをだしプレッソでのばしてつゆだくに。辛いけどさっぱりとした感じもあって、ナムルのお野菜の甘みがじんわりと感じられて、一度食べ始めたら止まらないおいしさ。水キムチにだしプレッソを入れてもおいしいかもですね」

そして、最近作ったヒットメニューというチヂミのレシピも教えていただきました。

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【百合根のチヂミ】

材料(2〜3枚分)
 だしプレッソ 鰹節 160ml
 中力粉 100g
 塩 小さじ1
 百合根 1個
 玉ねぎ 1/2個
 サラダ油・ごま油 各適量

1 ボウルに中力粉と塩を入れ、だしプレッソを注ぎ、ダマがないようにしっかり混ぜる。
2 百合根は1枚ずつはがして水洗いをし、水けをきる。玉ねぎは薄切りにする。
3 1に2を加えて混ぜ合わせる。
4 フライパンに多めのサラダ油を入れ、中火にかける。
5 3を流し入れ、ごま油を回しかける。弱火にして、表面がカリッとするまでじっくりと焼く。
6 裏に返し、同様にじっくりと焼く。好みで柑橘を搾ってもおいしい。

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「小麦粉を水ではなく、だしプレッソでとくのがポイントです。しいたけのだしを使ってきのこのチヂミを作ったりしていたのですが、百合根など和の食材を使うときに鰹のだしを使うとおいしいなと思って。中力粉を使うので、冷めてももちもちとしていておいしいですよ」

味がついているので、タレはなくてもOK。

「大分には地獄蒸しっていう調理法があるんです。温泉の蒸気で素材を蒸すだけで、すごくおいしくなる。ここに深み鰹白だしとかだしプレッソがあれば、いろいろな料理ができそうです。温泉入っておいしいもの食べて、最高ですよ。ぜひ別府にいらしてくださいね」

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取材・文/藤井志織

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プロフィール

梁原仙喜
「Beppu Sake Stand 巡」店長

韓国料理を提供するカフェ「民家カフェ uri chip」の経営を経て、大分市の「丸田酒舗」の丸田晋也さんとともに、「Beppu Sake Stand 巡」をオープン。純米酒やナチュラルワインと韓国料理の組み合わせの妙を伝えたいと、キッチンからサービスまでをこなす。
インスタグラムは @beppusakestand.jun